市販のクオーツムーブメントと時計針を使って、文字盤はダイソーのコルク鍋敷きにレーザー刻印した自作時計を作りました。数字は印字ではなく、ダイソーの数字飾りを貼り付けて立体感を出しています(アイキャッチ画像がそれです)。
作ってみて一番困ったのが、買ったムーブメントのシャフト長に対してコルクの厚みが厚すぎたことでした。結局、表面側にザグリ(座ぐり)を入れ、ナットが掛かる構造にすることで解決しましたが、同じことをやる人には、最初からロングシャフトのムーブメントを買うことを強くおすすめします。厚みトラブルを回避できるので、そっちの方が確実です。
この記事では、私が実際にやった「ミドルシャフト+表面ザグリ対処」の方法も含めて、材料選定から加工・組み立てまでの流れをまとめておきます。
使った材料と機材
材料は以下の通りです。
- クオーツムーブメント:手作り時計ドットコムで購入(今回はミドルシャフト系)
- 時計針セット:同じく手作り時計ドットコムの針セット
- 文字盤素材:ダイソーのコルク鍋敷き
- 数字:ダイソーの数字飾り
- 装飾:Qubyの刻印(後述)
主要な部品の購入先リンクを貼っておきます。ちなみに、時計針については、今回みたいにコルクを文字盤にする場合は白いほうが視認性が上がると思います。

機材・ソフトとしては、一般のご家庭にはなさそうな機器ばかりでアレですが、レーザー加工機、ボール盤(ザグリ加工用)、Inkscape(文字盤レイアウト作成)を使いました。CNCがあればザグリをきれいに作れますが、今回は手持ちのボール盤で対処しています。
レーザー加工機は必須ですが、あとはあれば便利くらいの話で、無くても作れるとは思います。
今回使った工作機械たちです。作業場が汚いのはまあ仕方がないですね。
厚い文字盤を使うならロングシャフト一択
ダイソーのコルク鍋敷きは結構厚みがあって、通常のミドルシャフトだとシャフトが足りず、ナットの締め代が不足してしまいました。
これを解決する方法としては、大きく2つあります。
一つ目はロングシャフトのムーブメントを選ぶこと。これが一番楽で確実です。厚みのある文字盤でも固定が成立しやすいし、後述するようなザグリ加工も基本的に不要になります。
二つ目は今回私がやった方法で、ミドルシャフトを使う場合に、表面ザグリでナット座を作る方法。道具と精度次第では手間も難易度も上がるので、特別な理由がなければロングシャフトを選んだ方が賢明だと思います。
文字盤デザイン:Inkscapeと数字飾りの組み合わせ
文字盤のベースデザインはInkscapeで作りました。ただ、数字自体はレーザーで焼くのではなく、ダイソーの数字飾りを貼り付ける構成にしています。印刷より視認性が良いし、完成品に「工作感」が出て気に入っています。
具体的な作業の流れはこんな感じです。まずInkscapeで中心点と外周のガイドを作り、数字の貼り付け位置(12箇所)を決めます。

レーザーでは数字位置の目印(短めの線)だけを刻印しておいて、そこに合わせて数字飾りを木工用ボンドで貼り付けていきます。
仕上げに装飾としてQuby刻印を入れて、全体の「顔」を作りました。
レーザー印字のコツとしては、捨て板で位置決め治具を作ることをおすすめします。コルク鍋敷きを何もなしでレーザー刻印するのはまず無理なので、捨て板に外形(または外形の一部)だけを刻印して、そこに鍋敷きをピッタリ合わせて置いた状態で本番刻印をすると、中心ズレが大きく減ります(数ミリくらいはずれるかもですが、まあ大した問題ではないので良しとします)。

ミドルシャフトで起きた問題と表面ザグリでの対処
さて、今回の最大の問題点です。ロングシャフトではなくミドルシャフトのムーブメントを買ってしまったため、鍋敷きの厚みでシャフトが足りず、固定ナットの締め代が不足しました。
対処法として、表面(前面)側にザグリを入れて、ナットが沈み込む座面を作ることにしました。これで表面でナットを締めるための「有効な掛かり」が確保でき、なんとか固定できました。

ザグリ加工自体はボール盤でも可能ですが、私のボール盤は安価なもので主軸が横方向にガタつきやすく、正直なところ加工は少し苦労しました。
掘ること自体はできるんですが、底面のきれいさや同心度を狙うなら、CNCの方が断然安定すると思います。
Quby刻印について
今回の時計の個性は、文字盤にQubyを刻印したことです。Qubyは版権物なので、既製品として同じことをやるのは現実的に難しく、個人で自作して自分用に楽しむからこそ成立する要素だと考えています。
Qubyはメッセージアプリのスタンプなどで、名前はわからないがたまに見かけるキャラクターとしては有名かもしれません。シンプルな輪郭と表情のバリエーションが特徴的ですね。今回の時計では文字盤の余白に入れて、量産品にはない「自分の好き」を前面に出してみました。

念のため書いておくと、版権物を扱う場合は公開範囲や配布の有無で状況が変わってくるので、この記事では「自分用の一点もの」という前提で話を進めています。
組み立ての流れ
組み立ては大体こんな手順で進めました。
文字盤(鍋敷き)に中心穴を開けて、今回のようにミドルシャフトで足りない場合は表面ザグリでナット座を作ります。ムーブメントを通してナットで固定したら、時計針を順番に取り付けていきます(時針→分針→秒針の順)。
最後に数字飾りを貼り付けて、壁掛けすれば完成です。目印を刻んでおくと、数字飾りの配置で迷わずに済みます。
まとめ
今回は、ダイソーに売ってる鍋敷きを使ってオリジナル時計を作るという企画をやってみました。思いつきでやってみたのですが、案外うまくできて満足しています。
同じような構成で作る人向けに、ポイントをまとめておきます。
厚い文字盤(コルク鍋敷きなど)を使うなら、最初からロングシャフトのムーブメントを選ぶのが正解です。ザグリ加工が不要になり、失敗も減ります。もしミドルシャフトを間違えて買ってしまっても、表面ザグリでナット座を作れば固定はできますが。
レーザー刻印では捨て板で治具化すると位置決めが安定しますし、数字をダイソー飾りにすると視認性と完成度が上がります。Qubyのような版権物は「自分用の一点もの」だからこそ楽しめる要素だと思います。
単純にオリジナル時計を作りたい場合、プリンタで文字盤を印刷するなどがポピュラーな方法だと思いますが、今回のようにレーザーで絵を描いてみるというのも、味があって面白い試みではないかと思います。




