Skip to content

GeForce環境におけるWayland使用は時期尚早?

By vinesystems

はじめに:永遠に来ない「Wayland元年」を待ちわびて

「Waylandは未来、X11はレガシー」と言われ続けて早10年以上。「そろそろ移行できるかな?」と思って試しては、画面のチラつきやアプリのクラッシュに心を折られて、結局X11に逃げ帰る……そんな経験をしたLinuxユーザーは、私だけではないはずです。

特にNVIDIAユーザー(GeForce勢)にとって、Waylandへの道は険しいものでした。でも、主要ディストリビューションがデフォルトをWaylandへ切り替えつつある昨今、いつまでもX11にしがみついているわけにもいきません。

今回は、あえて「安定性とは無縁」と思われがちなローリングリリースの openSUSE Tumbleweed で、GeForce環境でのWayland移行を試してみたので、その正直な感想を共有したいと思います。

動作環境:あえてのTumbleweed

検証環境は以下の通りです。そこそこ古いワークステーションに、これまた少し前のGeForceを載せていますが、ソフトウェアスタックは最新鋭です。

  • OS: openSUSE Tumbleweed (20251205)
  • DE: KDE Plasma 6.5.3 / Frameworks 6.20.0
  • Qt: 6.10.1
  • Kernel: 6.17.9-1-default
  • GPU: NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti
  • Driver: NVIDIA Proprietary Driver

良い点:圧倒的な「軽快さ」と「モダンな描画」

結論から言うと、デスクトップの描画パフォーマンスは明らかにX11より良いです。

ブラウザのスクロール、ウィンドウのアニメーション、ワークスペースの切り替え。これらが「ヌルヌル」動きます。X11時代に時折感じていたティアリング(画面の裂け)は完全に過去のものとなりました。

KDE Plasma 6系との相性も良く、Waylandネイティブで動作している時のレスポンスの良さは、「一度味わうとX11のモッサリ感には戻りたくない」と思わせる魅力があります。

悪い点:やはり残る「発展途上感」

でも、「全てが完璧か?」と問われれば、答えは「NO」です。かつてのような致命的なクラッシュこそ減りましたが、細かいストレスは確実に存在します。

IME(日本語入力)周りの挙動不審

これが最大の鬼門です。Fcitx5を使用していますが、Wayland環境下では変換候補ウィンドウの表示位置がおかしくなることがあります。

特に入力フォームのフォーカスを見失っているのか、とんでもない場所に候補が出たり、あるいはElectron製アプリ(VS CodeやDiscordなど)の一部で入力そのものが不安定になったりする現象に遭遇しました。環境変数をいじって騙し騙し使っていますが、X11のような「何も考えずに動く」安心感はまだありません。

XWayland依存アプリの亡霊

Waylandネイティブに対応していない、あるいはX11を前提とした古い作りのアプリ(XWayland経由で動くもの)の挙動が怪しいです。

ウィンドウのリサイズ時に一瞬表示が乱れたり、クリップボードの共有がうまくいかなかったり。「あれ、この挙動おかしいな?」と思って調べると、大抵そのアプリはX11ベースで作られています。

結論:それでもWaylandを使い続ける理由

正直なところ、不具合はあります。IMEの挙動にイラッとすることもあります。

でも、私はこのままWaylandを常用しようと思っています。

理由は単純で、「時代がそちらに向かっているから」です。

FedoraやUbuntuをはじめ、Linuxデスクトップのエコシステム全体がWaylandへの最適化にリソースを集中させています。これ以上X11に固執するのは、沈みゆく船に留まるようなものかもしれません。

それに、冷静に考えてみてください。

「安定動作を求めるなら、そもそもopenSUSE Tumbleweedなんて使わないよね」という話です。

日々降ってくる大量のアップデートでカーネルもライブラリも入れ替わる環境を使っているのですから、Waylandの不具合の一つや二つ、楽しんでトラブルシューティングするくらいの気概で付き合っていくのが、Tumbleweedユーザーの流儀というものでしょう。

よほどの致命的な問題(OSが起動しない、GPUが認識しない等)が起きない限り、この「軽快だけど、少し手のかかる」環境を楽しんでみるつもりです。

Appendix: 詳細スペック

オペレーティングシステム: openSUSE Tumbleweed 20251205
KDE Plasma バージョン: 6.5.3
KDE Frameworks バージョン: 6.20.0
Qt バージョン: 6.10.1
カーネルバージョン: 6.17.9-1-default (64 ビット)
グラフィックプラットフォーム: Wayland
プロセッサ: 8 × Intel® Xeon® CPU E3-1281 v3 @ 3.70GHz
メモリ: 32 GiB
グラフィックプロセッサ: NVIDIA GeForce GTX 1050 Ti
製造元: Hewlett-Packard
製品名: HP Z230 SFF Workstation

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA